沖縄国際映画祭3日目となる3月22日(土)、この日桜坂劇場での最初の上映となる、沖縄戦の知られざる真実を捉えたドキュメンタリー「ザ・ノンフィクション 沖縄 引き裂かれた兄弟 ヤンバルの森で何があったのか」の特別上映が行われ、上映後にトークショーが開催されました。
登壇したのは、本作品のプロデューサーである味谷和哉さん、前沖縄県知事の稲嶺惠一さんと、沖縄国際映画祭実行委員会副委員長の安里繁信さんの3人。
本ドキュメンタリーでは、国内最大の地上戦が行われた沖縄において、日系アメリカ兵と日本兵という敵同士として相対することになってしまった東江(あがりえ)兄弟の、戦争に翻弄された激動の物語が描かれています。
味谷プロデューサーは、本作品に携わるまで、戦争についてよく知らなかったと言います。「兵士同士が戦うのが戦争と思っていましたが、実際は子どもや普通の市民たちが招集されていたという事実を、恥ずかしながら知りませんでした。このドキュメンタリーを作りながら、僕自身が非常に勉強になったし、同じように若い世代の人たちにこの事実を伝えたいと思いました」と制作への想いを語りました。
作品では、日系アメリカ兵として沖縄に渡ってきた兄が、ヤンバルの森に隠れていた家族を奇跡的に探し出し、銃撃戦により傷ついた弟に山を降りるよう説得をしますが、それに弟が応じようとしないシーンが印象的に描かれます。
その弟、東江康治さんと知り合いだという稲嶺前知事。「私たちの世代は、アメリカ人に捕えられるのであれば、それよりも死を選ぶように教育されてきました。康治さんの場合、山を降りるということはアメリカへの降伏を意味することであり、だからこそ兄弟である兄の説得もかたくなに拒んだのです」と自らの体験も交えながら解説し、だからこそ「教育が大切である」と説きました。
そして安里副委員長から、米軍の立場でありながら、アメリカ兵におびえて隠れていた多くの沖縄県民を救い出した元日系アメリカ兵たちに対し、稲嶺前知事が感謝状を送ったエピソードが紹介されると、会場は大きな拍手で包まれました。
「日本人は、あいまいな表現で濁して事実を直視したがらない傾向がありますが、このドキュメンタリーでは、色々な事実を表に出してくれました。いいところは伸ばし、悪い部分はきちんと議論して是正していけば、沖縄の将来はより良いものになるはずです」と、稲嶺前知事は話しました。
それを受けて、味谷プロデューサーは「映像を通して事実を知り、議論する機会が生まれるのがドキュメンタリーの醍醐味です。また別の視点から沖縄を捉えたドキュメンタリーを必ず作りますので、ぜひ次も沖縄で上映する機会を作ってください」と次回作品への意気込みを熱く語り、会場の拍手と共にトークショーは終了となりました。