3月23日(日)、初めての那覇市内で行われたレッドカーペットの熱気冷めやらぬ人出の中、桜坂劇場シアターBにて沖縄の伝統芸能「組踊」の役者を父に持つ男の子の父と会えない寂しさと、舞台の華やかさやその裏に隠れる努力をドキュメンタリータッチで描いた作品「うんじゅぬ花道」の上映が行われました。
上映に先立ち行われた舞台挨拶では、実際に組踊の演者である親子、神谷武史さんと武之心さん、山城知佳子・砂川敦志両監督が登壇。
父親役の神谷武史さんは、「最初にオファーをもらったときは、組踊の本番を映画にするのだと思っていたが“私たちが舞台裏でどうやって継承しているのかという部分を描きたい”ということだったので驚いた。裏の部分に光を当ててもらうのは初めてのことだったので戸惑いもあったが、300年余り続いている伝統芸能が、親子や地域の中でどのようにして受け継がれているのか、沖縄の芸能について考える良い作品になっていると思うのでぜひ楽しんでいただきたい」と話しました。
山城監督からは「個人的に組踊というものに惹かれて、30代、同世代の役者さんに話が聞きたいと探し始めました。追いかけていくと華やかな表舞台とは違って、毎日涙の日々。いくつもの稽古を掛け持ちしているのが日常で、本当に多くのドラマを乗り越えて初めて表舞台がある、と知って驚かされた。その驚きが少しでも伝わってくれたらいいと思う」と、芸能を支えている裏側の厳しさについて語っていました。
作品を撮ったきっかけについて砂川監督は、「自分自身、ウチナー芝居は単語としては知っていたが、実際の芝居を知らなかったことが映画作りのきっかけになった。
調べるにつれて、これを映画にできないかと思うようになった。映画やテレビで伝統芸能を見たことがある人は大勢いると思うが、実際に劇場に行かないと、本当に伝統芸能を見たことにはならないと思うので、映画を見た人が実際に劇場に行くきっかけになってくれたらいいと思う」と、実際に劇場で見ることの大切さを訴えていました。
舞台挨拶の締めくくりは、主人公の武之心さん。
「映画を撮ると言われたときは、なんで僕が出るのか分からなかった」と話しながらも、「台風の日にも撮影をしたし、OKになったものより失敗のほうがものすごく多かったけれど、(映画を見たら)親子愛や組踊を築いてくれる人がいることが分かるので、(映画を)見た人の為になってくれたらいいなと思う」と、小学生とは思えないしっかりとしたコメントを寄せ、舞台挨拶を締めくくっていました。