3月22日(土)、沖縄コンベンションセンター・シアター3にて、「日本のコメディ・世界のコメディ」部門の『ダイナマイトどんどん』が上映されました。 上映前には、今年の部門4作品をセレクトした演出家・編集者・作家としてマルチに活躍する髙平哲郎さんを筆頭に、よしもと屈指の映画好き芸人・なだぎ武、そしてスペシャルゲストとして、映画監督・タレントとしても知られる山本晋也監督という、実に濃いメンツが登場。
どりあんず・堤による司会のもと、期待に違わず、ディープでマニアックなトークショーが展開されました。
同作品は、岡本喜八監督による、1978年の大映制作(配給は東映)の日本のコメディ映画。
舞台は昭和25年、終戦直後の北九州・小倉。2つのヤクザ組織の抗争を、警察署長の提案により野球で決着を付けるとうハチャメチャなストーリー。出演は、菅原文太さん、宮下順子さん、北大路欣也さんなど。
堤が当作品選出の理由を、髙平さんに尋ねると「脇役がすばらしいんです。ヤクザの親分が鞍馬天狗の嵐寛寿郎さん、かたや相手の新興ヤクザの親分が仁義なき闘いの金子信雄さん、この時点ですでに東映のヤクザ映画のパロディになってるんです」とコメント。
続けて「嵐寛寿郎さんは、すでに歳だから何喋っているか分からないし(笑)。ピンクのスーツを着た岸田新さんや、ピッチャー役の田中邦衛さん。北大路欣也さんは指が無いから魔球を投げたり(笑)」と見どころを紹介しました。
時代背景を考えると、なお深いと言う山本監督。
「この当時なぜ野球があんなに流行っていたかというと、賭博ができたから。川上が何本ホームラン打つか?とかね。当時、GHQは『3S政策』を取り入れたんです。スポーツ、スクリーン、セックス。この3つを開放すれば、この国は変わるだろうとね。この民主主義の象徴みたいな野球ってのを、ヤクザがやろうという発想が面白いんだけど、最後に懲役の代わりに沖縄に送られる。そんな社会的な時代背景にも注目して欲しい」と社会派な解説をしていました。
その後も、岡本監督がちょい役で出ているエピソードや、岡本監督の西部劇は戦争映画として描かれている話、アメリカの野球を題材にした作品紹介映画など、髙平さんから興味深いテーマが次々に語られました。髙平さんと山本監督という専門家2人による尽きることのないディープなネタに、完全に押され気味のなだぎはと言うと、ただただ「36年も前のコメディなのに今でも面白いってすごいですねと…」関心するばかり。
すると山本監督、「…コメディというか、そんなジャンルは無いし、これからも永久に無いと思うんだけど、“スポーツヤクザ”映画ってやつですよ! ダイナマイトを投げて、それを打つあたり、映画『リオ・ブラボー』に近い」と話すと、静まりかえった会場に「み、皆さん知ってますか(汗)?」と、なだぎがあせるほど、山本監督の脱線トークは、どんどんマニアックな方向に。
さらに、「スポーツで戦うというのが民主主義。今だって浦和レッズの応援がすごいでしょ!」など、話はあちこちに飛躍し、その都度会場は爆笑。
「コカ・コーラとホットドッグと野球は民主主義の象徴だった! 三ツ矢サイダーで育った僕は、コーラは吐き出しましたけどね(笑)」と、終了時間20分が過ぎてもまだまだ喋り足りない山本監督。「実にバカバカしいけど、とにかく面白い映画です!」と締め、大きな拍手の中、会場を後にしました。